2009/03/15

オバマ大統領の演説力

 米国オバマ大統領の演説は、聴く者を魅了する。

 しかし、その演説力を助けているある"秘密兵器"がある。それが「プロンプター」だ。プロンプターとは、演壇の両脇に設置してある透明のガラス板のことをいう。このガラス板に演説内容が電子的に文章で流れるため、演説者はもちろんそれを"読むこと"に集中してしまう。演説時に聴衆の顔をみれないという欠点が生まれるのだ。

(Copyright © 2009, New York Media LLC)


 オバマ大統領の演説時に、いつもそれはオバマ氏の両脇を支えている。まるで彼の"演説のボディガード”のように、それは脇を固めている。オバマ氏が左のカメラに向かって話しかけるときは左側のプロンプターを、右の時は右側のプロンプターを。というように、まるで何も見ずに自分の言葉で話しているように見える。もちろん原稿内容はオバマ氏自身の言葉なのであろう。
 歴代大統領の中で見ても、オバマ氏のスピーチはこのプロンプターへの依存度が異常なほど高い。ごく短い挨拶や数分程度のスピーチでさえも、オバマ氏は必ずプロンプターを使用する。
 前大統領のブッシュ氏や、歴代の米国大統領は主要演説以外ではまず使わず、簡単なノートやメモ書きなどで済ませていた。オバマ氏よりはプロンプターの使用頻度がずっと少ないのだ。
 もともとプロンプターとは、演劇などで役者が長台詞を言ったり、テレビのアナウンサーが原稿を見ずにカメラに向かって話すために使用されるものだ。オバマ氏のそれは言わば、自分自身を大統領として相応しく聴衆に対して”見せるため”のものであって"聴かせるため"のものではないのだろう。プロンプターを使用せず失言や暴言ばかりを繰り返す演説者と、プロンプターを通してしか聴衆を語れない演説者と、国民はどちらを選ぶのだろう。
 「知らしめす」という言葉には、「お治めになる」という意味がある。政治というのはある意味、国民に対して「見せる」つまり「魅せる」というのが重要になってくる。日本の政治家のようにプロンプターを使った方が良いのではないかと思わせるような演説者が多いのも考えものではあるが。

スピーチ力 合衆国再生―大いなる希望を抱いて オバマ 危険な正体

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